レオタードのにほい 「プロローグ」

 

「はい!跳んで!!もっと!高く!高く!!」
凛とした博子の声が体育館に響く。
「そうそう!それでいいのよ!その調子!!」

 

このところの、新体操部の躍進は中谷知佳の活躍によるところが大きかった。彼女は、新体操のキャリアは浅く、博子ほどのベテランから見れば技術的にはまだまだ未熟な面が多々ある。しかし先輩部員達と比べた時、知佳の生来の運動能力の高さが助けとなり、一見、演技にさほどの遜色を感じさせなかった。また、整った顔立ち、その年齢に不釣合いなほど成熟した体形も他を圧倒している。

ふくよかな乳房は、重力を感じさせないほど形良く整い、プルルンと音が聞こえるようなお尻もまた、形容しがたい品があった。そしてなによりも、スラリとのびたその脚は、これまで博子が教えた生徒達の中でも比類ない脚線美を持ち合わせていたのだった。

新体操は審判の採点によって成績が決まる競技だ。技術的価値と芸術的価値によって点数が付けられるために、どうしても選手そのものの見た目も重要となる。審判も人間なので、技術が同じレベルであれば、美人のほうに得点が高くなのは当然だった。その点、中谷知佳という選手は、キャリアの不足を補って余りある美貌に恵まれているとも言えた。

 

実際、博子自身が彼女に対して、軽い嫉妬を感じることすらある。嫉妬とはいえ、悪意のこもったものではない。もちろんそれは、知佳に与えられたの天賦の才を再認識するだけの事だった。

(この娘は、十年に一度の逸材だわ!)

かつて同じように才能に恵まれ賞賛された女教師は、ますますこのダイヤの原石に魅入られていくこととなる。

 

「それじゃ!みんな集まって」

気がつけば下校時刻を過ぎていた。今日は土曜日だから下校の音楽も流れなかったわけだ。博子は慌てて招集をかける。部員達は練習を止め、キビキビと彼女の周りに集まった。
「来週はいよいよ大会だけど、この調子で頑張って!きっといい結果がでるわ」
「はい」
息の揃った返事が心地よい。
「今日は遅くなっちゃったから、後片付けは先生がやっておきます、あなたたちは直ぐに着替えて」
「は〜い!」
面倒な片付けをせずに済むのだ。部員たちの返事には幾分嬉しさが混じっている。
(うふふ、まだまだ子供なのね)
と、妹を思う姉のようなやさしい気持ちになる博子だった。
「それじゃ、これで練習終わり!」
「ありがとうございました!」
部員達は一礼すると、一斉に出口へと向かう。
「はやく、帰るのよ!用務員さんに怒られちゃうから」
「は〜い!」
「先生さよなら!」


 
 

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